SEAESの眼(SEAES EYES)

今日、スーパーに行って買い物をした。

先日、ちょっとしたいざこざから子供を連れて出ていった妻がいないからだ。

スーパーに買い物を付き合わされていた事は事実としてあるのだが、
私は車の中でじっと待つタイプで何が何処に売っているのかなんて全く知るよしもない。

無性に「焼き魚」が食べたくなったのと、
カップラーメンやうどんなどの即席麺にもいささか飽きてきたと言うこと。
外食と言っても牛丼やハンバーガー、チキンばかり食べられる年代では無いのだ。

気の利いた定食屋でも知っていたら良いのだが、
転勤で今年の4月にこしてきたばかりで勝手がわからない。
得意のネットで調べてみても意外に我々世代が行きたい店は見つからないものなのだ。

色々な事に腹を立てていたその時。

職場の同僚と出会ってしまった。

「あ、あれ？」

と彼女は言う。

「課長、買い物なんてするんですか？」

何も言い返せないでモジモジしていると、
察してくれたらしく。

「ま、そういう事もありますよね。」

その言葉に少し救われた。

彼女の買い物カゴが気になり見てみると、
美味しそうな秋刀魚が入っていた。

「秋刀魚か。」

と何気につぶやくと、すかさず。

「この季節になるとどうしても秋刀魚が食べたくなるんです。」

季節はすっかり秋になっている事すら気がついてない自分がいた。

「もう秋だな。」

梨、ブドウ、いちじく、カボチャなどなど。
周りを見渡せば、秋の食べ物があふれていた。

そんな事すら気がつかないで生活している自分がいる事に改めて気づく。

「今日は久しぶりの実家で食事でもしようと思いまして」

と彼女が言う。

聞けばまだ独身なのだと。

「なぜ結婚しないの？」

と質問したかったが、飲み込んだ。

すると、

「結婚はタイミングだと言いますが、本当ですよね。」

色々と訳ありなんだ。

そう思ったら、
些細なことでも言い争うことが出来るパートナーがいる事が、
どれほど幸せなのかという事が少しわかった気がした。

彼女と別れ、レジで会計を済まして車に乗り込む。

結婚生活の根気をすっかり忘れてしまっていた自分を恥じると同時に、
妻へ電話を入れた。

「秋刀魚３匹買ったんだ　一緒に食べないか」