2008年12月07日

シャッターのムコウ

シャッターのムコウ

東京の下町の昭和50年代の初頭、街角にマツダのディーラーがありました。

世は空前のスーパーカーブーム、青年はまだ成人式を迎える前であったと記
憶する。マツダからとんでもない車が発売されるというニュースでもちきりなの
は、青年というもの頭の半分は車だった頃の時代である。

明日発表という前夜、カバーをかけられた車がキャリアカーで到着し、ディーラ
ーの車庫の中に納められた。
何人かは既に目撃し、その後急いでかけつけた青年も少年たちも見ることが
できずに残念がった。

その車がマツダの初代RX-7だった。

日本車に久々に現れた”リトラクタブル式(収納式のこと)”ライトを備えた小さな
スポーツカーのイメージカラーはなぜか黄緑色、あの”アマガエル”色である。

夕方もう一度ディーラーに行くと車庫のシャッターがわずかにあいていて、下か
ら覗きこむと、果たしてRX-7はそこにあった。

小さくて低く、見たこともないグリルレスで、リトラクタブルライトが閉まったまま
のRX-7はそこにあり、ずっと下から覗きこむうちに街の青年や少年が集まって
きた。

この車、後に略されて「セブン」と呼ばれる車はそれほどの期待をこめて迎えら
れたものである。

写真を探すと、ラリーシーンに出たセブンの写真が出てきた。
なんとなく後年のランチアストラトスを思い起こすようなこの写真を見て、当時
初めてストラトスを見た時とセブンの初めての夜を比べてみる。

青年たちの頭の半分が、少年たちの頭のほとんどが車であった頃。
僕らはセブンをストラトス以上の衝撃を持って見つめ、期待した。

その晩は翌日の展示会まで待ちきれなくて頭は全てセブンとなっていた。
その晩は、町内の男たち男の子たちは全て頭はセブンとなっていた。

世の中がそれほどに車好きの時代があったのです。


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