SEAESの眼(SEAES EYES)

昭和のクルマたちはさまざまなデザインの挑戦をしていた時期でもありました。

現在のようにどのクルマも似通うこともなく、そのカタチを見れば確かにあの車
だとわかった頃、どんなモチーフを使うかでそのクルマは大きくセールを変えて
いた頃、そこにはまだ初めて取り入れるデザインへの挑戦があったのです。

今晩は日産のチェリークーペをとりあげてみます。

かつてそのデザインを「日本初のブレーンバッククーペ」と呼ばれたと記憶する
のだがインターネットの検索では出てこず、記憶違いであったかとも思われる
のだが、これはロータスヨーロッパに用いられた手法という記事を覚えている。

後ろ斜めを大きく塞いだファーストバックスタイルは他に類を見ず、チェリークー
ペのみが持つ特徴となっていた。

「斜め後方の視界は絶望的である」というような車評誌の記事を読んだ記憶が
あるのだが、ここを塞ぐことでこのクーペのスタイルは成立し、その車高こそ違う
が、まさに和製ロータスヨーロッパとして若者にウケていた。

後にオーバーフェンダー（タイヤを太くする為にフェンダーの外に後付のアーチ型
フェンダーをつけること）を設けたX1-Rというスポーツタイプを追加した。

今見ても美しいその軽くもスポーティなクーペは魅力がある。
同社のスカイラインのアイデンティティである丸テールをつけ、当時ではまだ珍し
かったハッチを持つこのクーペは多くはスポーティ（もしくは暴走族風に）に改造
されていた。

「久美子、君を乗せるのだから」で売り出したチェリーは、クーペを持ち、ちょっと
だけヤン風な久美子を乗せていた。

当時サニーやチェリーに載せられていたエンジンは、シャーンシャーンと回る軽い
吹けあがりを特徴とした。
馬力より回転で稼ぐエンジンは、軽いボディをやすやすと引っ張っていた。

美しいクーペ、クーペフェチのひとつの思い出のクルマでありました。