2008年07月27日

来客

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それは暑い夏の蒸し暑い夜だった。

彼はホテルのベルキャプテンを仕事としてる。

何かいつもと違う雰囲気をかもし出しながらも日常業務に追われていた。

「忙しい」

シティーホテルの夜は予想以上に忙しい。

そんな時、
丁度、同期入社の彼ら三人と私の四名で偶然にもエレベーターに乗っていた。

すると押しても、
押しても居ない階に全てエレベーターが止まった。

「あれ?」

誰かが言った。

でも、みんな慌てなかった。

しばらくの沈黙の後、有る一人が言った。

「会長、お帰りなさいませ。」

すると一緒にいた他の彼らも察知し、

「おかえりなさいませ。」

すると、扉は閉まり目的階までスルスルと上っていた。




彼の勤めていたホテルの会長は、
自分のホテルをこよなく愛し、毎月自腹で止まるほどだったという。

そんな彼が生前「自分が亡くなったらホテルのベルボーイに棺を持たせてくれ」と。

丁度、その日。
偶然にも一緒のシフトになり、偶然にもエレベーターの乗り合わせた彼らこそ、
会長の棺を持った本人達だった。

その日はくしくも会長の命日。

素敵な体験をさせて貰ったと、彼は言った。


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