2008年07月19日

夏休み一日目

夏休み一日目

すっかりネットサーフィンに飽きたともおはパラパラとパソコン誌をめくり
やがて「Blog」という言葉を見つけた。

「日記かあ・・」、退屈だなと思うのは三日坊主な性格が災いして思い
出すどの夏休みも最後にまとめて書いた絵日記の思い出を持ってい
るからで、数日どころか8月まるまるサボっていたことが多い。

絵日記でさえそうならば、日記という言葉はひどく退屈に思える。

誰でも開設できて写真や文章が簡単に書けるもの、そんな解説は絵
日記のつづりと同じ、それでも紹介されているブログを見てみようと
ともおは思ったのだ。

カランと麦茶の中の氷がとけて落ち、いつの間にか量が増えているの
はしばし開いたブログを読んでいたからだ。

ともおの家の麦茶は変わっていて皆に驚かれるのは、カルピスで割っ
ているからだ。

親父が好む麦茶のカルピス割りは小僧にも当たり前の飲み物だった
のだが、夏休みに訪れる友達は毎回いぶかしんだ。

「お前んち変わってるなあ」

ブログには毎日のさまざまなことが綴られている。開いたブログは平
凡なサラリーマンのものでひどく退屈だ。

朝から鮭を食い、弁当を持ってでかけ電車に揺られて会社に行く。
朝飯の鮭の後は昼の弁当、帰りに寄った赤提灯の焼き鳥の写真が
続く。

その写真に添えられているのはまた退屈な言葉で、ちょっと焼きすぎ
だの、またハンバーグだの、焼き鳥を5本食べたなど興味ももてない
ことが続く。

これならば僕のほうがまだましなことが書けそうだ、ブログ恐るるに
足らず、ともおは高校に入学して初めての夏をパソコンの前で過ごす。

そしてそのブログの中のリンクからブログが集まっているブログのオ
フィシャルサイトを見つけるのである。

「すげっ」、趣味や興味、仕事や遊びのカテゴリーに分けられて数千
のブログが並んでいる。
カチカチとランダムに覗いていたのではとても全て読めそうもない。

「俺って何?」、ともおは自分の趣味や好み、興味のあることを考えて
みた。

麦茶カルピスの氷はますます解けて、机の上を雫でぬらし始めている。

改めて”俺”の趣味を考えたことのないともおは寝転んだまま天井板の
渦巻きを見上げている。

子供の頃はその渦巻きがまるで”ムンクの叫び”みたいに見えて怖く
て仕方なかった、節穴から覗かれているような妙な怖さで寝る時間に
なると布団に入りすぐに目をきつつ閉じていた。

ともおはBlogの世界に遊ぶ自分を思い描きながらゆっくりと眠りに入って
いった。

つづくかもしれない。


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