2008年11月04日

フェルメールの少女

フェルメールの少女

絵画が愛されるのは、時にその記憶のデジャヴに出会うからである。

昨晩、東京都美術館で開催されているフェルメール展の最後を飾ろうとする
からかフェルメールの絵画に隠された秘密というテーマでテレビ番組があり
見ていると、やはり彼女が現れた。

名作の「真珠の耳飾りの少女」のモデルの秘密をさらりと流していたのだが、
この絵は少女を描いているだけでもそれは秘密めく。

いつの時代も年をとらないと思われる少女の光をそのまま絵の中に封じ込
めれば、誰もがそれだけで触れがたい秘密を見るのである。

誰かに似ていると思うのは極東の島国の男だけでなく世界の人たちが耳飾
の真珠そのものの少女を思い出しているのである。

数百年をそのままで過ごした少女が振り返り謎の微笑みをつくる。

秘密はそのままに、彼女の唇の中に封じられているのである。

誰かに似ていると思うだけでじつはこの少女が誰なのかも知られていない。
誰であってもよいから、想像の人、思い出の人に重ね合わせることができる。

秋はもの想う季節である。 まるでやさしいピアノの旋律のように思い出が
よみがえり、真珠の耳かざりに重ねて少女を見るのである。

もし売られたなら何百億円という値打ちをつけるフェルメールは確かにこの
少女にいつの時代の人にも微笑むようにと残し、少女は何も疑わずにいつ
も秘密の微笑みを絶やさずに今に残り、未来へ続いてゆくのである。

微笑みを独り占めしたいと想うならば、思い出の中の数十年前に戻らねば
ならぬならば、何百億円の値打ちがあるのは当然なのである。


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