化け物の名前はサトウさん
毎度おなじみ、三題噺の時間です。
三題噺は、お客さまから三題をいただきまして、
即興で噺をこさえるという。
SEAESな二人でお題を募集しまして、頭の体操として愉しんで
いただきまして盛り上がろうっていう仕掛けでございます。
さて今回のお題は、「
『重量屋』株式会社 トーホー 改造計画」のdaidaiさんからいただきました
お題
「マロングラッセ」「魑魅魍魎」「楕円球」であります。
ご協力、感謝です。>daidaiさん
さて、どうなります事やらしばしお付き合い下さい。
むかしむかし。
あるところに、たいそう力持ちの化け物がいるという山があったそうな。
トーホー山という裾野の形が楕円。
丁度ラグビーボールのような形に広がった山なんだそうだ。
風の噂を聞いた化け物がいろんなところから集まっては夜な夜な力比べをしているそうな。
しかし、そんなトーホー山には沢山の栗の木があるらしく、
近くに住む人々は秋になると出かけたくなるのだが、躊躇してしまう。
そんな魅惑的な山なのだそうだ。
そのな時、旅巡業からの帰りなのか一人の関取が、
その村に立ち寄った。
一服の時に、そんな話を聞いてしまったものだから、
もう居ても立っても居られない。
「ご主人、化け物が居るという山はどっちの方向だい?」
主人も止めてはみるものの、この人ならばという淡い期待もしてしまう。
そうこうしているうちの関取は主人が指さす方向に悠々と歩いていってしまった。
「嗚呼」
落ち込む主人をよそに、一部始終を見ていて人が近所中にふれ回り、
この話で持ちきりだ。
関取は、大声を上げながら力自慢を探してます。
「力自慢はどこだぁ~」
どのくらい歩いたのか、栗林を抜けるとぽっかりと湖が目の前に広がっている。
「俺を呼んだのはおまえか?」
野太い声とともに、湖の対岸からひらりと飛んでくる黒い物体が。
「おまえが力自慢の化け物というヤツか」
関取も負けず劣らず太い声で応戦します。
「化け物とは心外な」
不敵な笑みを浮かべて両者にらみ合います。
「では、始めるか」
そう関取が切り出すと。
化け物は指さします。
「あそこで相撲をとろうじゃないか」
相撲が本職の関取は、勝ったも同然と薄ら笑いを浮かべています。
しかし、この化け物に勝ったモノは居ないという店の主人の話を聞くと、
油断は出来ないと顔に張り手をはって気合いを入れます。
「はっけよい」
ど~ん。
両者がもの凄い力でぶつかります。
その波動で近くにある栗の木から栗がボトボトと落ちます。
こっそり、ついてきた店の主人と村人は、
ここぞとばかり栗を拾います。
しかし、簡単に拾えないの栗なのです。
あのとげとげしたトゲをどうにかしなければなりません。
「おぉ~~~~~~~~~」
ともの凄い勢いで土俵際まで一気に押し出す関取に、
思わず栗拾いを忘れて歓声を上げてしまう村人達。
「頑張れ、関取ぃ~」
もはや栗拾いなんて二の次、三の次です。
「頑張れ~」
もう化け物も関取も真剣勝負です。
「なかなかやるな~」
化け物も声が出ます。
関取も気が抜けません。
「おまえもなかなかだ」
そう言って両者、一歩も引きません。
どのくらいの時間が経過したでしょう。
村人達も息詰まるこの対戦に完全に魅了されています。
「あの化け物、凄いな」
誰かが言った、その瞬間。
「どど~ん」
関取の上手投げが決まりました。
「やった~」
村人達は大喜びです。
「これで自由に栗拾いが出来る」
と村人達は安堵の表情を浮かべています。
一緒に相撲を取った関取は言います。
「この栗は彼のモノだ」
「この栗が欲しければ彼と対決する必要があるんじゃないのかい?」
考えてみたら、勝手に怖がって居たのは村人達の方です。
村人達は知恵を絞り、そこで一つの考えが浮かびます。
「今まで勝手に怖がっていて申し訳なかった」
「これからは食事と酒を用意しよう」
「その代わり、栗を収穫させて欲しい」
そういう申し入れを化け物にしたのです。
すると化け物は、
「クリ、トラッセェ」
そういうと村人達も大喜びだ。
「さ、一緒に飲もうじゃないか」
村人達と関取、化け物の大宴会は夜を呈して行われたそうな。
その後、
地域ではクリを砂糖漬けにしたお菓子「トラッセェ」というそうな。
めでたしめでたし。
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