サトチビと羊肉

もとお@SEAES

2008年08月13日 21:53




毎度おなじみ、三題噺の時間です。

三題噺は、お客さまから三題をいただきまして、
即興で噺をこさえるという。

SEAESな二人でお題を募集しまして、頭の体操として愉しんで
いただきまして盛り上がろうっていう仕掛けでございます。

さて今回のお題は、「つちや餅店」のつちやさんからいただきましたお題であります

さて、どうなります事やらしばしお付き合い下さい。

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むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

今日は、孫が船にのって遊びに来ます。

どんぶらこ、どんぶらこ。

川の上流からゆっくりと静かに。忍び寄るように。

どんぶらこ、どんぶらこ。


孫の名前は「サト」と言います。

でも、みんなから「チビ」と呼ばれている。

そうなんです。

同じように食べているんですが、
どうしても身長が思うように大きくならない。

そんな時です。

富籤好きのおじいさんが新しい富籤が売り出させるという話を
街の人から聞いてきました。

「ばあさん、今度売り出しになる富籤なんじゃが。」

そう言うと、家事の手を休めておじいさんに言います。

「また富籤ですか、当たらないのに子供のように夢中になって。」

おじいさんは続けます。

「今度のヤツは違うんじゃ。」

「当たるとなにやら大きくなるそうじゃ。」

流石のおばあさんにこの話に、聞く耳を持たないわけには行きません。

「何が大きくなるんでしょう?」

おばあさんが確認します。

「わしも良くわからんのじゃが、大きくなるそうなんじゃ。」

ばつが悪そうなおじいさん。

でも、おばあさんに理解はしています。

「サトが喜びそうですね。」

サトの力になってやりたい。

ただ、その一心で富籤を買おうという事にあいなりました。



「こんにちは~」

元気な声で挨拶しています。

「サトじゃな。」

おじいさんもおばあさんも大喜びです。

「元気そうで何よりじゃ。かわりは無いかい?」

おじいさんが訪ねます。

「少し大きくなったんじゃないかね?」

サトは元気良く答えます。

「全く変わりはないんです。」

でも、めげてないサトをみておばあさんが、

「長旅で疲れたろう、ゆっくりお休み。」

するとサトは直ぐに寝てしまいました。

翌る日。

「今日は特別な日じゃ。」

とおじいさんは朝からそわそわしてます。

「サトはまで寝ているのか?」

長旅で疲れているサトは一向に起きうようとしません。

「あんまり熟睡じゃと、ちと心配じゃな。」

とおじいさん。

「寝る子は育つと言いますから。」

とおばあさん。

「サトの熟睡は、ちと心配じゃが出かけるとするか。」

熟睡するサトを横目に、おじいさんは富籤会場へ行くのです。


一方、富籤会場はもの凄い人だかり。

隣の街からも噂を聞きつけた人達でごったがえしています。

「こりゃ、参ったのぉ~」

おじいさんは、少し困惑気味ですが、可愛い孫の為。
諦める訳にはいきません。

「そんなおじいさんも何とか念願の富籤を入手しました。」

何とか当たる事を祈りつつ、富籤の抽選が始まります。

「今回の富籤は何か大きいモノが当たるそうじゃが。」

近くに居た人におじいさんが尋ねます。

すると、

「じいさん、今まで見たことが無いようなモノが当たるらしいぞ。」
「腰抜かすんじゃないぞ。ははは。」

何が当たるのかは結局のところ、わかりませんでしたが、
とてつもないモノが当たるという事だけは理解したおじいさん。

「五のくじぅ~」
「四のくじぅ~」
「三のくじぅ~」

どんどん、進行していく富籤もいよいよ最後です。

「一のくじぅ~」

経験豊富のおじいさんの周りの雰囲気にすっかり取り込まれ、
年甲斐も無く緊張している様子。

「緊張するのぉ~」

係のモノが、数字を読みあげます。

「三、五、七」

するとおじいさん。

「当たっとる。」

周りに居た人達が、確認してくれる。

「じいさん、冥土の土産になったぁ~」

一等賞が当たる事なんて、そうそうあるもんじゃありません。

おじいさん本人もビックリしています。

賞金も未曾有の金額だったのですが、なんと副賞に羊の肉がついてきたのです。

「これを食べたら、サトも大きくなるじゃろう。」

足取り軽く、自宅も戻り、可愛い孫でありますサトと一緒に羊肉を食べたのでした。

「サトも熟成したらラムになるかもね。」

そう言って、たくさんたくさん食べたのでした。

めでたし、めでたし。

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