サトチビと羊肉
毎度おなじみ、三題噺の時間です。
三題噺は、お客さまから三題をいただきまして、
即興で噺をこさえるという。
SEAESな二人でお題を募集しまして、頭の体操として愉しんで
いただきまして盛り上がろうっていう仕掛けでございます。
さて今回のお題は、「つちや餅店」のつちやさんからいただきましたお題であります
さて、どうなります事やらしばしお付き合い下さい。
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むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
今日は、孫が船にのって遊びに来ます。
どんぶらこ、どんぶらこ。
川の上流からゆっくりと静かに。忍び寄るように。
どんぶらこ、どんぶらこ。
孫の名前は「サト」と言います。
でも、みんなから「チビ」と呼ばれている。
そうなんです。
同じように食べているんですが、
どうしても身長が思うように大きくならない。
そんな時です。
富籤好きのおじいさんが新しい富籤が売り出させるという話を
街の人から聞いてきました。
「ばあさん、今度売り出しになる富籤なんじゃが。」
そう言うと、家事の手を休めておじいさんに言います。
「また富籤ですか、当たらないのに子供のように夢中になって。」
おじいさんは続けます。
「今度のヤツは違うんじゃ。」
「当たるとなにやら大きくなるそうじゃ。」
流石のおばあさんにこの話に、聞く耳を持たないわけには行きません。
「何が大きくなるんでしょう?」
おばあさんが確認します。
「わしも良くわからんのじゃが、大きくなるそうなんじゃ。」
ばつが悪そうなおじいさん。
でも、おばあさんに理解はしています。
「サトが喜びそうですね。」
サトの力になってやりたい。
ただ、その一心で富籤を買おうという事にあいなりました。
「こんにちは~」
元気な声で挨拶しています。
「サトじゃな。」
おじいさんもおばあさんも大喜びです。
「元気そうで何よりじゃ。かわりは無いかい?」
おじいさんが訪ねます。
「少し大きくなったんじゃないかね?」
サトは元気良く答えます。
「全く変わりはないんです。」
でも、めげてないサトをみておばあさんが、
「長旅で疲れたろう、ゆっくりお休み。」
するとサトは直ぐに寝てしまいました。
翌る日。
「今日は特別な日じゃ。」
とおじいさんは朝からそわそわしてます。
「サトはまで寝ているのか?」
長旅で疲れているサトは一向に起きうようとしません。
「あんまり熟睡じゃと、ちと心配じゃな。」
とおじいさん。
「寝る子は育つと言いますから。」
とおばあさん。
「サトの熟睡は、ちと心配じゃが出かけるとするか。」
熟睡するサトを横目に、おじいさんは富籤会場へ行くのです。
一方、富籤会場はもの凄い人だかり。
隣の街からも噂を聞きつけた人達でごったがえしています。
「こりゃ、参ったのぉ~」
おじいさんは、少し困惑気味ですが、可愛い孫の為。
諦める訳にはいきません。
「そんなおじいさんも何とか念願の富籤を入手しました。」
何とか当たる事を祈りつつ、富籤の抽選が始まります。
「今回の富籤は何か大きいモノが当たるそうじゃが。」
近くに居た人におじいさんが尋ねます。
すると、
「じいさん、今まで見たことが無いようなモノが当たるらしいぞ。」
「腰抜かすんじゃないぞ。ははは。」
何が当たるのかは結局のところ、わかりませんでしたが、
とてつもないモノが当たるという事だけは理解したおじいさん。
「五のくじぅ~」
「四のくじぅ~」
「三のくじぅ~」
どんどん、進行していく富籤もいよいよ最後です。
「一のくじぅ~」
経験豊富のおじいさんの周りの雰囲気にすっかり取り込まれ、
年甲斐も無く緊張している様子。
「緊張するのぉ~」
係のモノが、数字を読みあげます。
「三、五、七」
するとおじいさん。
「当たっとる。」
周りに居た人達が、確認してくれる。
「じいさん、冥土の土産になったぁ~」
一等賞が当たる事なんて、そうそうあるもんじゃありません。
おじいさん本人もビックリしています。
賞金も未曾有の金額だったのですが、なんと副賞に羊の肉がついてきたのです。
「これを食べたら、サトも大きくなるじゃろう。」
足取り軽く、自宅も戻り、可愛い孫でありますサトと一緒に羊肉を食べたのでした。
「サトも熟成したらラムになるかもね。」
そう言って、たくさんたくさん食べたのでした。
めでたし、めでたし。
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