真夜中のスパイダーマン
写真が一枚もないから同型同色の写真をお借りしてきた。
今から15年ほど前、建材会社の営業として設計に興味を持ち深夜まで夢中に
なって仕事をしていた頃、どの方も同じく夏前の外車屋さんに毎晩のように通い
深夜で誰もいない展示場で腕を組んでいた。
今は大きくなった並行輸入車のアルファは二台、アメリカ使用のそいつの一台
が数ヶ月後に手に入ることになった(排ガスなどで登録に時間を要した)。
深夜までの目仕事は、ドラフターと格闘しているからでよい設計ができるまで
根をつめていれば肩はガチガチ、目はショボショボ、頭は固くなってしまう。
夏前の誘惑は、もう既に秋になってしまったけれど、深夜になってもコイツが駐
車場で待っていてくれて、「もう一時間ほどどう?」と誘っていたのです。
アルファロメオスパイダーヴェローチェというマイファーストアルファ。
お尻の丸い先代は映画「卒業」でダスティン・ホフマンがゴールデンブリッジを走
るシーンに使われておりました。
ウインドシールドの左右にあるレバーをはずし、浮き上がった幌を後ろに放り出せ
ばバサッという音と共に幌は後ろに畳まれる。
若い日の自分はそれがカッコいいのだと思い込み、信号発進などでよくそんなこ
とをしておりました。
スパイダーは力がある車でもなく、早くもありませんでしたが豪快に風を巻き込む
から体感スピードがあります。
幌をしまえば「音のアルファ」と言われる排気音がダイレクトに聞こえて気分を高
揚させてくれる。
真夜中の浜松バイパスから弁天までの往復は深夜の定番になっていました。
この頃のことをあまり覚えていないのは、深夜専門の車だったから。
誰かとどこかに行った記憶が全くないのです。
男にはそんな時期もあり、また変わった車に戻してしまう男は今も深夜向きでは
あるのです。
ラフなのはイタリアンなのさと嘯いても、深夜の風に吹き飛ばされるだけ。
この車、最後は真夏の駐車場での炎上で終わる。
見事な引き際で去っていった車の思い出でした。
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