かつて日本の車が熱かった頃、それぞれのメーカーは海外の車の模倣と言わ
れた時代からオリジナルを生み出していった頃がありました。
いまや乗用車部門から撤退した名門”いすゞ”は当時の車好きな若者を熱くし
た一台の車を持っていました。
いすずべレット
小型のクーペボディにツインカムエンジンを載せ、プリンスやトヨタと戦っていた
当時のいすゞべレットは当時日本のアルファロメオだと思ったものでした。
外車を手に入れることなど予想もつかない頃、僅かに輸入される車たちは大型
のアメリカ車だけでなく、ヨーロピアンスポーツが入ってきました。
学校の行き返りに車の名前当てをする少年たちでさえ、まだまだ車が多くない
時代、そのような希少な高級車やスポーツカーをを見ることができたのです。
友人の父親が日産のシルビアを買ったと聞いては押しかけていき、町に宇宙船
そのもののコスモスポーツが停めてあればそこまで歩いて見に行きました。
家庭用にと普及をはじめたワーゲンを見ては「外車外車」と囃したことを覚えてい
ます。
べレットのデザイン、小さいボディにツインカムエンジンのスポーツという姿は唯一
買ってもらった車のポケットブックスにものっていたアルファロメオを思わせるもの
でした。
アメリカのフルサイズカーばかり並ぶ本の一部がヨーロッパのスポーツカーにあて
られていました。
少年たちは家にカラーテレビが入ることよりも、学校の行き返りに見る高級車が
好きでした。
珍しい車を見れば、翌日のヒーローになれたものでした。
まだカラーテレビが家にない子供は、そうして車に夢中になっていったのでした。