アルファロメオスパイダーは美しい車であるのはご存知のとおり、もちろん
最新のスパイダーもありますが、モデルチェンジ前の古典スパイダー類を
見ますと、心が動くのは、車が車らしいカタチをしていた車だからです。
今でもスポーツカーなんて言葉がわずかに残っていますが、オープン2座
の車を指すこの言葉がピッタリと当てはまるのがスパイダーかと思います。
ライト感覚で、さほど気合を入れることもなく乗りこなせ、決して早くはない
けれど日常使いの中では存在感があり、いざという時にはちゃんと幌をあ
げれば雨にだって乗れるのです。
今回は雨のちスパイダーのお話しです。
スパイダーの美しさの一つに、あまり注目されませんがトランク部分の水
平に長いのびやかさがあります。
ラウンドすることなく、1枚の鉄板を伏せたようなトランク部分は他の車と比
べると全くのフラットに見える。
これがこの車が案外バックシャンに見える要素をつくっています。
最近は効率ばかり高めた車が多く、タイヤの前後が短い車が多い中、伸
びやかなオーバーハングを持つ車は車が車らしいカタチをしています。
さて雨の日のあと、スパイダーを走らせますと妙な音がしました。
ザーッ、ザーッチャプンと海が打ち寄せるような音がしています。
驚いてトランクを開けると、そこには”海”がありました。
まっすぐ平らでゴムのウェザーストリップだけで雨水の浸入を防いでいる
古きアルファは、雨をしっかり取り込んでトランクに海を誕生させていたの
です。
雨のち、かいだし、自然乾燥。
アルファがこんなことをしていたら、きっと海を空に帰していると思っていた
だきたい。
伸びやかで水平なトランクが美しいのは、こんなことをさせてオーナーを
働かせるからでもあるのです。
雨のちスパイダー、こんなスパイダーとの蜜月の頃のお話でした。